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2009/11/26(木)02:40
またしてもうっかり観てしまった傑作。


七夕P、RAP、セバスチャンP作品。
すでに俺が観た時点で相当な数のレビューが書かれていて、
そのほとんどが“絶句”もしくは“とにかく観て泣こう”的なもの。
俺もそれに関しては全面的に賛成で、この作品についてアレコレ書くのは、
俺程度の動画技術および文才では全く野暮なことでしょう。

ただ、中也に関してだけは、別の話。

十数年前に得た、拙い上に忘れかけてる知識だけど、どうにか掘り起こして
書かざるを得ないでしょう。こんなもの見せられたら。
以下、ネタバレを含んだり含まなかったりするので格納。

某有名漫画家さんの影響(笑)で、20年ほど前に中也の作品に触れ、
そして中也好きになった俺ですが、正直、中也の「死」に関連する詩というものは、
当時からあまり好きではありませんでした。
もう少し正確に言うと、正視に堪えないという表現があてはまるでしょうか。
あまりにも生々しくて、重く、おそらく自分が中也と同じような境遇になったとしたら、
こういう心境になるんだろうな、というのを目の前に突きつけられているようで…
とうの昔に忘れ去っていた亡き曾祖母の記憶まで呼び起こされるほどの力を持った
中也の言葉は、今以上に能天気だった十代の頃の俺でさえ受け止めがたいものでした。

中也の詩人としての出発点は、弟・亜郎の死を詠んだ八歳の時。
そんな幼い頃から人の死を意識して言葉を紡いだ人間など、きっと他にいない。
中也の死生観についての言葉が持つ鋭さは、この原点に由来しているんだろうと思う。

しかし原点が「死」にあるにも関わらず、中也自身は後に自らの日記で
「詩が生れるのは情愛から」だとも語っている。
情愛を注いだものとの離別、あるいは喪ったものへの情愛を綴った
中也の詩は、その深すぎる情愛の力も加わってさらに重く、耐え難い。


さて、「3A07」に引用された詩は、Pの「無題《こひ人よ、~》」と、あずさの「春日狂想」。
まず「無題《こひ人よ、~》」の方ですが…

 幸福なんだ、世の煩ひのすべてを忘れて、
 いかなることとも知らないで、私は
 おまへに尽せるんだから幸福だ!


一見すると恋愛の幸せを詠んでいるように感じられますが、
これ、別れた恋人を想って詠んだ詩です。
現在進行形ではなく、恋人と過ごした過去の日々を愛しく想い、
想いの届かない現在においてなお、精神的に尽している中也の姿。

「世の煩ひのすべてを忘れて」プロデューサーとしてあずさに尽している
現在が幸福であることは偽らざる本音であっただろうが、しかし
「いかなることとも知らないで」という言葉とは裏腹に、
おそらく自分の死期が近いであろう事を感じていたはずのPは、
この先あずさと添い遂げることがかなわない自分の姿を中也に重ねて、
「幸福」という言葉の裏に、ひそかに深い悲しみを湛えたこの詩を
あずさに捧げたのではないだろうか。

そして、それを受けてのあずさの「春日狂想」。

 愛するものは、死んだのですから、
 たしかにそれは、死んだのですから、

 もはやどうにも、ならぬのですから、
 そのもののために、そのもののために、


これは有名な、中也の長男・文也の死を悲しんで詠んだ詩。
愛息の死に、精神に異常を来すほどのショックを受けた中也の姿は、
まさにこの作品での、歌を忘れたあずさの姿そのものだったろう。

「そのもののために」の後に続く言葉は、「奉仕の気持に、ならなけあならない」

あずさは作詞という形でPへの「奉仕の気持」を表すわけですが、
その「詩が情愛から生れる」過程は奇しくも前述した中也の詩観と同じもの。
精神錯乱から快復した中也が手紙の中で、

「(子供が)亡くなつたは辛いがせめて詩の方は進展すると分つてゐました」
「進展は十年に一度するかしないかのもの」

と語っているのと同様に、喪ったものの大きさがあったからこそ、
あずさは「隣に…」という傑作を世に送り出すことができたのでしょう。
そして、たとえ届かないとしても、「精神的に尽すことの幸福」を知ったあずさと
765プロのみんなは、もう振り返ることも、俯くこともないはず。

あずさが空にトランプを放つラストシーンは、中也「心象」の

 涙湧く。
 み空の方より、
 風の吹く


という一節を連想する、美しい情景でした。
ただ、この時のあずさの目には、もう涙は無いはずですけど。


俺にとっては重過ぎた中也の詩が、「アイマス」という緩衝材を介することで
今回、多少は“心地よい重さ”に感じられたような気がします。
このストーリーの起点に中也の詩があったのか、あるいはストーリーの
エッセンスとして後から中也の詩をふりかけたのかはわかりませんが、
どちらにせよ、この作品の素晴らしさには変わりはないし、
そんな歴史的名作に中也の精神世界を取り入れて昇華させてくれたことには、
中也好きの端くれとして感謝してもしきれないほどです。
七夕P、RAP、セバスチャンPの御三方と、この作品およびシネ☆MADに関わった
全ての方々に全力の感謝。本当にありがとうございました。

なんだかいつも以上にまとまりが無い上に、都合のいい曲解と私見に満ちた
しょうもない文章になってしまいましたが、おかしい点については笑って読み飛ばすか、
どうしても我慢できない中也ファンの皆様はコメでご指摘いただけると幸いです(笑)
あと、資料を漁っている時に「ちょっと飴売ってくる」というコメの意味がわかって吹いた。
(春日狂想に「飴売爺々」が出てくるのです。)
もう流れちゃったけど(笑)素晴らしいセンス。

最後になりますが、中也の日記にそれらしい言葉をたまたま見つけたので、
その言葉をこの作品への賛辞として引用して、〆とさせていただきます。

 芸術作品がイマジネーションに依って作されるものだとしても
 イマジネーションは実生活への愛に依って作される。
 どんな架空的な作品でも、それが面白い場合には必ず現実的である。
コメント
いいレビューですねえ・・・中原中也作品への深い思い入れも含めて感動しました。
ところで「某有名漫画家さんの影響」と書かれていましたが約20年前に発表された「含羞」(曽根富美子)というマンガはご存知ですか?
中原中也と小林秀雄の交友を描いた傑作です。
ハイドPの文章を読んで久しぶりに読み返してみたくなりました。
2009/11/28(土) 05:16 | URL | かわばた #WGv/JGO2[ 編集]
>かわばたさん
いらっしゃいませはじめまして。
過分な評価をいただき、嬉しいやら恥ずかしいやらです。
そのマンガ、十数年前に知って古本屋を巡りましたが、
結局見つけられずにそのまま忘却の彼方でした(笑)
思い出させてくれて、ありがとうございます。
さきほどググったところ、即決のオークションがあったので
勢いにまかせて、さっそく落札してみました。
ネット社会って素敵ですね(笑)
2009/11/28(土) 20:58 | URL | ハイド #su5KoE9w[ 編集]
3A07の影響で中也の詩集を買った俺ホイホイなレビューGJ!詩集なんて買ったことなかったどころか、まともに詩を読んだのは高校の教科書が最後だったんですが、あの作品の中也の詩がすごく印象に残ったんですよね。ニコマスの影響でCD買うことはあったんですが、詩集を買うことになるとはw こうして作品の背景を解説してもらえて助かります。これからじっくり読みますよー
2009/11/29(日) 01:06 | URL | 通りすがり #-[ 編集]
>通りすがりさん
こんな拙いレビューをお読み頂き、ありがとうございます。
こうして3A07を通じて、中也に興味を持って下さる方が
実際にいらっしゃるというのはホント嬉しい。
作品自体もさることながら、中也自身も色々と面白いので(笑)
機会があれば、解説本や中也の日記などもご一読をおすすめします。
2009/11/29(日) 02:31 | URL | ハイド #su5KoE9w[ 編集]
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