一週間ほど前のことになりますが、昔追い求めていた夢が、
またひとつ叶えられました。
「ワン・ゼロ」の続編、
「打天楽」。
まぁ、ここ最近の仕事の多忙さと、ニコマス生活のおかげで、
だいぶ忘却の彼方だったわけですが(笑)
まだ学生だった90年代、以前ヤフオクで手に入れた中也のマンガ「含羞」や
紫堂恭子先生の「エンジェリック・ゲーム」と並んで、
個人的に幻のタイトルとして探し続けていた「打天楽」。
この前、ふと思い出してググってみたらなんと今世紀に入って文庫化されてるし。
そんなわけで、こないださっそく買ってみました。
神保町や地元を歩き回って探したあの本が、ワンクリックで届いてしまう。
「含羞」の時にも同じこと言ったけど、良い時代になったもんだ…(笑)
さて、「打天楽」の前作になる「ワン・ゼロ」に関してですが、
初出は1984年の作品。
少女漫画であるということもあり、当時はまったく知りませんでしたが、
90年代にある縁で読み、その独特すぎる世界観と空気感に衝撃を受けたものでした。
物語の鍵を握るのが、“マニアック”という名の「ネットワーク上の人工知能」であり、
まだ世間一般に、インターネットという概念すら浸透していなかった時代に、
登場人物に
「今日び、電子メール以外のDMなんて珍しい」と言わせてしまうほど、
正確に近未来予想された世界の中で描かれる、文字通りマニアックな物語。
そんな中で、割と普通の少年少女が“神”と戦うという、何度読んでも
「これ、少女漫画として大丈夫だったのか?」と思わざるを得ない内容。
それでも、とにかく登場人物が良い意味で「軽く」生きていて、
ある種、憧れにも似た親しみの持てるヤツばかりで。
その中でも、なぜか一番人間くさく思えるのが、人間ではない
「マニアック」だというのも面白いところ。
そんな「ワン・ゼロ」の後日譚に当たる番外編として描かれた「打天楽」。
期待に違わぬ独自性と軽さ(笑)にあふれた面白い話でした。
これだけでも探し続けて、読んだ甲斐があった。
「だけでも」と書きましたが、この文庫版には表題の打天楽以外にも、
ワン・ゼロの前史にあたる「夢喰い」と、その他短編が4本収録されていて、
とにかく全部が秀逸。地球の青年と月世界の歌姫との恋を描く「ムーン・チャイルド」と「楕円軌道ラプソディ」、
地球人類から分岐した人類の末裔とアンドロイド達の顛末を描く「チェンジリング」と
「ネペンティス」。
「普通思いつかねーよこんなの!」と叫びながらニヤニヤしてしまう、
なんとも不思議で甘い、秀作ぞろいでした。今読んでも新しい。
で、打天楽をググった時に知ったのですが、作者である佐藤史生先生、
2年前に亡くなられていたんですね……
まだ57歳だったそうで、得難い才能の早すぎる死に、無念の思いしかありません。
今更ですが、ご冥福をお祈りするとともに、素晴らしい作品を残して下さり、
最大級の感謝をお伝えしたい。本当にありがとうございました。